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補助金と助成金の違いは?中小企業診断士が法律の条文から整理
2026.09.21
目次
この記事でわかること
- 国の補助金の基本ルールを定めた補助金適正化法は、「補助金」と「助成金」を名前で分けていません。政令には、名前が「助成金」の給付金も指定されています
- 実務で効く違いは「所管する役所」と「審査で落ちることがあるかどうか」の2点です
- 補助金は返済不要ですが、原則として事業終了後の後払いです。いったん全額を立て替える必要があります
- 交付決定の前に発注してしまうと、その経費は補助の対象外になります。契約を結んだだけでも対象外です
- 虚偽の申請をすると、返還だけでは終わりません。雇用関係助成金では5年間の不支給があり、事業主名などが公表されることもあります。国の補助金では刑事罰まであります
補助金適正化法は、名前で制度を分けていない
先に結論を書きます。国の補助金の基本ルールを定めた法律は、「補助金」と「助成金」を名前で分けていません。
その法律が、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(通称・補助金適正化法)です。第2条は、この法律が対象とする「補助金等」を次のように定めています。
この法律において「補助金等」とは、国が国以外の者に対して交付する次に掲げるものをいう。
一 補助金
二 負担金(国際条約に基く分担金を除く。)
三 利子補給金
四 その他相当の反対給付を受けない給付金であつて政令で定めるもの
出典: e-Gov法令検索「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和三十年法律第百七十九号)」第2条(2026-09-20確認)
列挙されているのは補助金・負担金・利子補給金と、政令で定める給付金です。条文に「助成金」という言葉は出てきません。
では助成金は対象外かというと、そうではありません。第4号の「政令で定めるもの」は、施行令の第2条が指定しています。そこには、「労働時間等設定改善推進助成金」(第78号)や「受動喫煙防止対策助成金」(第101号)のように、名前が「助成金」の給付金も入っています。つまりこの法律は、名前が補助金か助成金かで対象を分けてはいません。
出典: e-Gov法令検索「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律施行令(昭和三十年政令第二百五十五号)」第2条(2026-09-20確認)
逆の例もあります。厚生労働省が所管する制度の中には「高度安全機械等導入支援補助金」という、名称が「補助金」のものがあります。名前の違いは、制度の中身の違いを保証しません。所管や審査の有無を名称で決めつけず、その制度の要領を読んで確かめてください。
出典: 厚生労働省「各種助成金・奨励金等の制度」(2026-09-20確認)
実務上の違いは「所管」と「採否の決まり方」
名前で分けた定義はなくても、実務では傾向が分かれています。使い分けの当たりをつけるには、次の表の「主な所管」と「要件を満たせば受け取れるか」の行を見てください。
| 補助金と呼ばれることが多いもの | 助成金と呼ばれることが多いもの | |
|---|---|---|
| 主な所管 | 経済産業省・中小企業庁、自治体 | 厚生労働省(都道府県労働局・ハローワーク) |
| 目的の中心 | 設備投資・販路開拓・新事業への挑戦 | 雇用の維持、人材育成、労働環境の改善 |
| 要件を満たせば受け取れるか | いいえ。審査があり、落ちることがある | 原則として受給できるものが多い |
なお、この記事で補助金の審査・後払い・交付決定・報告について説明する部分は、ミラサポplusが解説している中小企業庁所管の補助金を前提にしています。自治体などの補助金は手続が違うことがあるので、それぞれの公募要領(募集の条件や手続をまとめた文書)で確かめてください。
ここが最も大きな違いです。補助金の側は、国の公式サイトがはっきり書いています。中小企業庁が運営するミラサポplusには「補助金は要件を満たして申請しても必ずもらえるわけではありません」と明記されています。中小企業庁所管の補助金では、複数の外部有識者が申請書類を採点し、予算金額の枠内で上位の案件だけが採択される(審査で選ばれる)仕組みだからです。
出典: 経済産業省 中小企業庁 ミラサポplus「補助金入門 STEP1:補助金の基本知識」/同「STEP3:補助の審査・交付・報告」(2026-09-20確認)
一方の助成金について、同じミラサポplusは「助成金は要件を満たして申請すれば原則受給できるものが多い」と説明しています。「ものが多い」であって、すべての助成金がそうだとは書かれていません。自社が使う制度がどちらなのかは、その制度の支給要領で確かめてください。
要件は厳格です。厚生労働省は雇用関係助成金について、すべての制度に共通する支給要領と申請様式を公開しており、これを満たさなければ受給できません。加えて、各助成金の個別の要件も満たす必要があります。「申請書を出せば自動的に振り込まれる」という意味ではない点は押さえてください。
出典: 経済産業省 中小企業庁 ミラサポplus「補助金入門 STEP1:補助金の基本知識」/厚生労働省「雇用関係助成金の申請にあたって」(共通要領・申請様式)(2026-09-20確認)
ここで、雇用関係助成金の財源を確かめておきます。雇用関係助成金は、雇用保険法の第62条(雇用安定事業)と第63条(能力開発事業)にもとづいて支給されます。この2つの事業の費用には、雇用保険料のうち「雇用保険二事業」の保険料が充てられます(同法第68条第2項)。この保険料は事業主だけが負担しており、労働者負担はありません。令和8年度の料率は一般の事業で1,000分の3.5、建設の事業で1,000分の4.5です。
出典: 厚生労働省・ハローワーク「令和8(2026)年度 雇用保険料率のご案内」/e-Gov法令検索「雇用保険法(昭和四十九年法律第百十六号)」第62条・第63条・第68条/厚生労働省「雇用関係助成金 共通要領」(令和8年4月8日現在の版)第1(2026-09-20確認)
つまり、雇用関係助成金は自社が払った保険料の使い道でもあります。
覚え方としては、「設備や販路にお金を使うなら補助金、人を雇う・育てる・処遇を上げるなら助成金」から探し始めると外しにくくなります。
補助金は返済不要だが、お金が入るのは最後
ここは資金繰りに直結するので、制度の中身より先に押さえてください。補助金は返済不要です。ただし受け取るタイミングが独特です。
ミラサポplusは「補助金は原則、事業終了後の『後払い(清算払い)』です」と説明しています。つまり設備を買う代金は、いったん自社が全額を立て替えることになります。さらに補助金には自己負担があります。補助率によって異なりますが、事業費の2分の1から3分の1程度が自己負担になります。
「返済不要」にも但し書きがあります。ミラサポplusによれば、補助金の種類によっては、一定の利益が出た場合に補助金を国に返納する「収益納付」の制度があります。補助金で購入した設備などを売却する場合には「財産処分」の手続が必要になり、補助金の返還を求められることがあります。
出典: 経済産業省 中小企業庁 ミラサポplus「補助金入門 STEP1:補助金の基本知識」(2026-09-20確認)
1,000万円の設備に補助率2分の1の補助金が出るとしても、手元に1,000万円を用意できなければ事業は始められません。補助金の相談を受けたとき、私が制度の話より先に資金繰りを確認するのはこのためです。
落とし穴は「交付決定の前に発注してしまう」こと
採択の通知が来ると、すぐに発注したくなります。しかし、そこで動いてはいけません。
採択と交付決定は別の手続です。ミラサポplusの言葉では、採択は「補助金交付の候補に選ばれただけ」の段階です。ほとんどの補助金では、採択された後に交付申請書を出し、その審査を経てはじめて交付決定になります。ミラサポplusは「この交付決定の前に発注した経費については『補助金の対象外』になります」と明記しており、これには契約の締結も含まれます。
出典: 経済産業省 中小企業庁 ミラサポplus「補助金入門 STEP3:補助の審査・交付・報告」(2026-09-20確認)
採択の喜びと、見積書を前にした勢いが重なる時期に、この一線があります。「採択されました」の連絡が来たら、まず交付決定通知が届いているかを確認してください。届いていなければ、発注書にも契約書にも判を押さないことです。
申請から入金までの流れ
補助金の流れを、順番に並べます。どこで待ち時間が発生するかを把握しておくと、投資計画を立てやすくなります。
- 公募の開始。公募要領で対象・補助率・締切を確認する
- 申請書類の提出
- 審査。複数の外部有識者が採点する
- 採択の発表。公募が締め切られてから採択まで、通常2か月程度かかる
- 交付申請と、その審査
- 交付決定。ここではじめて発注・契約ができる
- 事業の実施。費用は自社で立て替える
- 実績報告書の提出と、事務局による検査
- 補助金額の確定と、後払いでの入金
- 事業化状況報告。交付後、年に1回、一般的に5回(5年間)続く
出典: 経済産業省 中小企業庁 ミラサポplus「補助金入門 STEP1」/同「STEP3」(2026-09-20確認)
忘れてはいけないのが最後の10番です。補助金は入金されて終わりではなく、その後も報告が続きます。回数は補助金によりますが、5回(5年間)が一般的です。報告義務を怠ると、補助金の返還を求められることがあります。担当者が替わっても報告が止まらないよう、誰が管理するかまで決めてから申請してください。
虚偽の申請は絶対にしない。不正受給の代償は返還だけでは終わらない
助成金は、要件を満たせば原則として受給できるものが多いと書きました。ここで必ず付け加えなければならないことがあります。要件を満たしていないのに満たしているように見せかける行為は、不正受給です。
厚生労働省は、雇用関係助成金の不正受給を「事業主等が偽りその他不正の行為により本来受けることのできない助成金の支給を受け、又は受けようとすること」と定義しています。注意すべきは範囲です。代表者本人だけでなく、役員・従業員・代理人など支給申請に関わった者が不正行為をした場合も、その事業主が不正をしたものとみなされます。「担当者が勝手にやった」は通用しません。
雇用関係助成金を不正受給した場合
- 受給した助成金の全額返還
- 不正受給した額の2割に相当する額の納付
- 不正受給日の翌日からの延滞金
- 不正受給決定日から5年間、雇用関係助成金は受給できない(不正をした助成金以外も含む)。全額返納されていない場合、この期間は延長される
- 公表基準に該当する場合は、事業主名・代表者名などの公表
出典: 厚生労働省「雇用関係助成金の不正受給について」/e-Gov法令検索「雇用保険法施行規則(昭和五十年労働省令第三号)」第140条の3(2026-09-20確認)
さらに、不正受給に関与した社会保険労務士等も、事業主と連帯して返還する義務を負います。関与した者自身も5年間は申請が受理されず、氏名及び事業所名が公表されます。「専門家に任せたから自分は知らなかった」という逃げ道はなく、逆に専門家の側にも重い責任が及ぶ設計です。
国の補助金を不正受給した場合
国の補助金には、補助金適正化法が適用されます。自治体が独自の財源で出す補助金は対象ではないので、その補助金の交付要綱などで確かめてください。
中小企業庁所管の補助金について、ミラサポplusは、補助金で取得した設備を目的外に使用したり、報告義務を怠ったりすると、補助金の返還を求めることがあると説明しています。国の補助金を財源にして事務局などが交付する補助金では、返還の細かな扱いをその補助金の交付規程で確かめてください。
法律の規定は次のとおりです。このうち取消し・返還・加算金(第17条から第19条)は、国から直接交付を受ける事業者にあてた規定です。罰則(第29条・第30条)は、事務局などを通じて交付を受けた者にもかかります。
- 交付決定の取消し(第17条)と返還命令(第18条)
- 交付決定を取り消されて返還を命じられたときは、受領の日から納付の日までの日数に応じ、年10.95パーセントの割合で計算した加算金。納期日までに納付しなければ、同じく年10.95パーセントの延滞金(第19条)
- 偽りその他不正の手段により補助金等の交付を受けた者は、5年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその併科(第29条)。しかもこの規定は、事情を知りながら交付や融通をした者にも同じく適用されます
- 補助金を他の用途に使った場合は、3年以下の拘禁刑もしくは50万円以下の罰金、またはその併科(第30条)
出典: e-Gov法令検索「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」第2条・第17条・第18条・第19条・第29条・第30条/経済産業省 中小企業庁 ミラサポplus「補助金入門 STEP3:補助の審査・交付・報告」(2026-09-20確認)
助成金と補助金では、数字が違う
ここで一つ注意があります。雇用関係助成金と補助金適正化法では、ペナルティの根拠も数字も違います。「不正受給した額の2割に相当する額の納付」と「年3パーセントの延滞金」は、雇用関係助成金の決まりです(延滞金は、支給申請が令和2年3月31日以前の場合は年5パーセント)。補助金適正化法が定める加算金・延滞金は、上に挙げたとおり年10.95パーセントです。
出典: 厚生労働省「雇用関係助成金の不正受給について」/厚生労働省「雇用関係助成金 共通要領」(令和8年4月8日現在の版)0205・0801(紙面に印刷された番号で7ページ・20ページ)(2026-09-20確認)
自社が使う制度が、どの規定(雇用関係助成金の共通要領、補助金適正化法、その補助金の交付規程、自治体の交付要綱)で動いているのかを確認してください。一般的な解説記事の数字を前提に判断するのは危険です。
雇用関係助成金では、うっかりの誤りは不正受給ではない。それでも受け取りすぎた分は返す
雇用関係助成金の共通要領は、不正の行為に当たるものとして「故意に支給申請書に虚偽の記載を行い又は偽りの証明を行うこと」を挙げています。一方で、事実に反する記載があっても、故意によらない記載誤りと認められる場合は、不正の行為には当たらないとしています。
ただし、安心してよいという話ではありません。支給すべき額を超えて受け取った分は、返還を命じられます。不正受給でなくても、受け取りすぎた分は返すことになります。
また、事実と違うと分かっていながら書類を整えて出せば、それは「うっかり」ではなく故意です。迷ったら、申請前に労働局へ確認してください。補助金については、制度ごとの公募要領や交付規程で確かめてください。
出典: 厚生労働省「雇用関係助成金 共通要領」(令和8年4月8日現在の版)0205・0801(紙面に印刷された番号で7ページ・20ページ)(2026-09-20確認)
どちらを狙うべきかの判断軸
制度名から探すと迷います。次の4つを順に確認すると、自社が向かうべき方向が決まります。
1. これから何にお金を使うのか
設備・システム・販路開拓なら補助金、採用・教育訓練・賃上げ・労働環境の改善なら助成金から探します。同じ「人手不足への対応」でも、省力化のための機械導入は補助金、人材の確保と定着は助成金と、入口が変わります。
2. 立て替えの余力があるか
補助金は原則として後払いです。手元資金か借入で全額を用意できるかを先に確認してください。用意できない場合は、補助金の申請より先につなぎ資金の相談を金融機関に持ち込むのが順序です。
3. 投資の時期に間に合うか
中小企業庁所管の補助金では、公募締切から採択まで通常2か月、そこから交付決定までさらに時間がかかります。「来月には設備を入れたい」という計画には間に合いません。逆算して、間に合わないと分かった時点で、補助金を待つのか自己資金で進めるのかを決めるべきです。
4. 併給できるかは制度ごとに違う
複数の制度を組み合わせられるかどうか、また同じ経費を別の制度と重複して計上できるかは、制度ごとに定められています。一般論で判断せず、必ず該当する公募要領の該当箇所を確認してください。
よくある質問
Q. 補助金は本当に返さなくていいのですか
A. 適正に使えば返済不要です。ただし無条件ではありません。国の補助金に適用される補助金適正化法には、交付決定の取消しと返還命令の規定があります。国から直接交付を受ける補助金で、目的外の使用などにより交付決定を取り消されて返還を命じられた場合には、返還に加えて年10.95パーセントの加算金が課されます。事務局などを通じて受ける補助金では、返還の扱いを交付規程で確かめてください。
また、適正に使っていても返すことになる場合があります。ミラサポplusは、一定の利益が出た場合の「収益納付」、補助金で購入した設備などを売却する場合の「財産処分」、報告義務を怠った場合の返還を挙げています。受け取った後の使い方にも責任が伴います。
Q. 知らずに間違えた場合も不正受給になりますか
A. 雇用関係助成金の共通要領では、故意によらない記載誤りと認められる場合は「不正の行為」に当たらないとされています。ただし、支給すべき額を超えて受け取った分は返還を命じられます。また、役員・従業員・代理人など申請に関わった人が不正の行為をした場合は、事業主の不正とみなされます。補助金については、公募要領や交付規程で確かめるか、事務局に問い合わせてください。不安な点は申請前に確認するのが確実です。
Q. 補助金と助成金は同時に使えますか
A. 制度の組み合わせによります。特に同じ経費を2つの制度に重複して計上できるかは、それぞれの公募要領や支給要領で確かめてください。読んでも分からなければ、申請前に事務局や労働局へ問い合わせるのが確実です。
Q. 個人事業主でも申請できますか
A. 制度によります。公募要領や支給要領の「対象者」の項目で、自社の形態が含まれているかを確かめてください。
Q. 名前に「助成金」とあれば審査なしで受け取れますか
A. いいえ、名前では決まりません。ミラサポplusの説明も、助成金は原則受給できるものが多い、というもので、すべてではありません。厚生労働省の制度にも「補助金」という名称のものがあります。名称ではなく、その制度の公募要領や支給要領を読んで判断してください。
Q. 採択されればすぐに入金されますか
A. いいえ。採択の後に交付決定、事業の実施、実績報告、検査という段階があり、入金はその後です。
まとめ
補助金適正化法は「補助金」と「助成金」を名前で分けておらず、名称だけでは制度の中身を判断できません。実務では「設備や販路なら補助金、人に関することなら助成金」を入口にして、該当制度の公募要領で対象と要件を確認するのが確実です。採否の決まり方は大きく違い、補助金は審査で落ちることがあるのに対し、助成金は要件を満たせば原則として受給できるものが多い、というのが国の説明です。
補助金でとくに注意すべきは、交付決定の前に発注しないことと、後払いに耐える資金繰りを先に用意することの2点です。そして、虚偽の申請だけは絶対に避けてください。返還では終わりません。雇用関係助成金では5年間の不支給があり、事業主名などが公表されることもあります。国の補助金では刑事罰まで定められています。
自社がどの制度に当てはまるか、投資の時期に間に合うかの判断は、事業計画そのものと切り離せません。補助金プロの無料ご相談フォームから、検討中の投資内容をお知らせください。中小企業診断士が、狙うべき制度と申請の段取りを一緒に整理します。



